aguidepost’s blog

みちしるべ

金融・保険業界のイノベーションについて

国内の様々な業界において世界的なイノベーションが起きており、多くの起業が淘汰され1流企業から凋落する現象が生じている。

国内では金融機関、保険業界の地盤が揺らぎつつある。

それは社会的な背景だけでなく、画期的な技術革新によってもたらされる地殻変動だ。

金融業界はモノを売っているわけではないので、収益構造に技術革新によってもたらされる悪影響は、他の業種と比べ数年の遅れでやってくる。

一般的に市場の動向は、まず『機能』を求め、機能に対しての需要が満たされるようになると、『信頼性』を求める。信頼性が市場の需要を満たすようになると、『利便性』を求めるようになる。『利便性』が市場の需要を満たしたあとは『価格』に移行し、供給が需要を追い越す。最後には画期的なイノベーションが誕生していく。

金融・保険商品というのは情報商材的な側面があり、顧客は慎重に自分の情報量の範囲で商品を選び、情報量が少ない顧客は専門家から情報を入手し、その範囲で商品を選ぶ。

自分で選んでいるようで情報が偏っているケースが大半を占める。

それ故に、『信頼性』が市場から得られない状況が続いてしまっている。

最近ではAIや情報技術によりある程度広範な情報提供が可能となりつつあるものの、まだまだ『信頼性』には欠ける業界である。

ただ、市場の需要を満たす『信頼できる』市場が確立した場合、次に到来するのは『価格』という事になる。最近では投資信託の手数料の差や信託報酬の手数料の差、ポイントの付与などで『価格』という領域での競争がはじまったものの、どこもこれ以上は下げられない水準となっている。

金融業界では顧客に対して、市場が求めている『信頼性』が担保されるような状況になれば、画期的なイノベーションが誕生すると考えられる。

一方、保険業界の場合は、完全に同一商品、同一価格であり、どこでどのように加入しても価格は一緒である。では、『価格競争』の代わりに向かう先はどこなのであろう?

推測をさせて頂くと、もちろん市場の『信頼性』を満たす事からではあるが、『価格競争』ではなく、『顧客の時間の競争』へ移行するのではないかと感じている。

保険商品はわざと複雑に開発して分かりにくくする事で、差別化をしてきたフシがある。最近ではよく分からないリスクに投資はしたくないと考える顧客が増えている為、シンプルで自分が理解できる保険商品が売れている。そうなると顧客の行動としては、余計なセールスはいらないので、欲しい保険商品を最短、最安値で気軽に加入したいというニーズが高まっていくのではないか?という仮説が立つ。

ただ、保険商品というのはここからが複雑で、いくらお金を出して購入しようと思っても健康で無ければ加入できないという側面もある。

個々のパーソナルな情報がないと最安値の商品は探せないという事だ。

その為、保険商品というものの販売で差別化する為には、顧客のパーソナル情報の安全を完全に担保する事で『信頼』を提供し、『価格競争と『時間競争』で優位性を築く企業が一定のシェアを持つのではないだろうか?

主にネット販売である。ライフネット生命などのネット保険はおそらく、そこまでの先の時代を見据えて作られた企業であるものの、日本人の文化に受け入れられるには少し企業するのが早すぎたのだと思う。また、大手保険代理店などがサプライチェーンにおいて優位性を発揮している現状を考えると、『価格競争』『時間競争』で保険会社ではなく、代理店が市場シェアを掌握する可能性もある。

そのあとは、誰もが想像し得ない画期的なイノベーションが起きるという流れだが、誰もが予測不能である。

すべての金融・保険業界で働く人間は「規制の枠組みで守られているから、大丈夫である」という概念を100%捨てて、これから到来する荒波に備えなければならない。硬直的な組織で官僚的に働くだけではなく、柔軟な組織構造に対応できるように個人としても準備をするべきだ。